中村祐輔

「評価の高い雑誌に報告されているものが有用で間違いがない」というのが幻想であることはSTAP細胞で実証済だ。氾濫する情報の中で、どれが本物で、どれが偽物か、専門家でも難しい中で、それを医療現場で取り入れるのは容易ではない。また、遺伝暗号は人種差・民族差があるので、日本で報告されたデータが欧米で再現できなくとも、それが間違っていると判断できず、真贋論争に決着をつけるのをさらに難しくしている。この観点からは、遺伝情報が類似しているアジア諸国、特に、中国や韓国との協力が極めて重要となる。 また、医療関係者や研究者が、日々飛び交う新しい情報を自分で入手してすべて確認することなど不可能と言っていい。われわれが読みこなすことのできるデータの数十倍、数百倍、いや数千倍の情報が提供されている。日本では、民主党政権時代に、コンピューターの計算速度を競うことが必要かどうかといった論争があったが、いくら早く計算できても、それを十分に活用できるだけの人材が育っていないことの方が問題である。